第27回:UCDを付加価値にサービス提供を推進

プロフィール
髙橋 明久 (たかはし あきひさ)

昭和58年(1983年)3月 福岡大学経済学部経済学科卒業
同年4月 イセト紙工株式会社(現 株式会社イセトー)に入社
営業に従事後、総合企画室にて商品企画、事業推進部長、経営企画室長を経て、
取締役 執行役員 営業統括本部長となる
常務執行役員、専務執行役員を経て、2020年4月 代表取締役社長就任 現在に至る
UCDA認定2級プロデューサー

  株式会社イセトーは、多数の取引先企業のUCD導入に貢献。UCDAアワード帳票コンテストにて、2020年「アナザーボイス賞」、2021年「実行委員長賞」を受賞した。

UCDに取り組むことで、製造業としての原点に立ち返ることができた

― 最初に、イセトー様がユニバーサルコミュニケーションデザイン(UCD)に取り組むきっかけからお話しいただきたいと思います。

髙橋: 2004年頃から、企画・制作部署のスタッフを中心に、ユニバーサルデザインって何?というところからスタートしました。ちょうどその頃は当社が消耗品としてのビジネスフォームをお客様に納品するビジネスから、データを預かり、処理から出力・加工まで行う、当社ではトータルソリューションと言っていますが、その移行期でした。もともと我々のDNAとしては製造業ということがありましたが、どんどんITが軸になっていく。当時はとりあえずデータ処理ができる注文を多く取ることにものすごくパワーを注いでいました。

― IT化に対応することに集中して活動されていたわけですね。

髙橋:それで、わかりやすさ・伝わりやすさという観点が忘れられそうになっていた。ですがUCDの取り組みをすることで製造業としての原点に立ち返らせてもらえたというか、そこにITとか技術的な要素を組み合わせることで、今の時代にマッチしたものに変わってきました。

― 2010年にアワードが始まっています。2000年代の初めは、世の中がいろいろ変化して、企業がお客様個人とのやり取りを重要視し始めた時期だと思います。そういう意味では、UCDAと貴社は同じような歩みをしているのかなと思います。

髙橋:お客様にUCDが浸透してきたことも大きいと思います。エポックメーキングなできごとでは、高松市役所様にUCDの考え方を取り入れたデザインで高いご評価をいただいたことです。そこに携われたことは大きかったですね。

― そうですね。あれはUCDAにとっても大きかったと思います。高松市長もUCDがこれからの時代は大事だとおっしゃっていました。

髙橋:最初ははたしてビジネスになりうるのかと懐疑的なところもありました。企画やデザイン自体に価値を認めて対価をいただくというのは、ビジネスフォーム販売が全盛だった私の営業マン時代にはなかったので。

― でも、今やそれがスタンダードになりつつあるという感じですね。

髙橋:そうですね。ご提案をするときにも、やっぱりUCDは切り離せないというか、必須の要件になりつつあるのかなと思います。

― 今ではたくさんの自治体が、納税通知では高松市のデザインを参考にしているようです。これは全国に広がるのではないでしょうか。

髙橋:最初にかかわったものだけに嬉しい限りです。

UCDの考え方を社内の共通言語にしていきたい

髙橋明久氏

― ただ、そうすると、人を育てることが大変になってきますね。

髙橋:人材育成は企業の発展にとってとても大切です。ただ社内では、学ぶことと資格を取ることは違うと言っています。例えばUCDAさんの資格認定制度ですが、重要なのはそれを商談やコンペの中でどう生かしていくかだと思います。資格を実地のフィールドで生かし、社内で共通言語にする。そうでないと文化として根付かないと思います。資格を取得する目的を各人が明確に持たなくてはいけないですね。

― お客様からUCDの話が出てくることはありますか。

髙橋:生・損保様では、見やすい伝わりやすいUCDを取り入れることはあたりまえだと意識されていると思います。ただ、地域金融機関様などでは、まだ浸透していない印象です。

― そういうところで、貴社が持っている知識や経験が、コンサルティングのような形で入っていけるのではないでしょうか。

髙橋:そうですね。やはりお客様と一緒に色々なソリューションを作り上げていくのが基本ですので、その中の一つにUCDの考え方を取り入れていければなと思います。

― ここ数年のアワードを見ていると、印刷物の役割がかなり変わってきていると思います。印刷物が起点になってデジタル媒体に展開したり、その逆もあったり、コミュニケーションのデザインにも変化が見られます。

髙橋:ペーパーレスというようなことはもう何十年も前から言われていますが、最近は紙媒体の持つすばらしさというか、紙ならではの役割が見直されつつあると思います。デジタル媒体にいざなう役割は紙でないと果たせないということもあります。印刷物の可能性というのは捨てたものではないと思いますね。

UCDAアワード2021で努力の結果を評価されたのはありがたかった

在間稔允

― 11月25日に開催した「UCDAアワード2021受賞企業のプレゼンテーション」の中で、SMBCのご担当者様が制作パートナーとしてイセトーさんのことを非常に評価されていました。

髙橋:過去何度かアワードを受賞したデザインを当社で手がけさせていただいたケースはありますが、その中でも特にSMBC様は企業全体、グループ全体で取り組まれています。ご担当者様が当社の努力をああいう形でご評価くださった。大きな励みになりました。

― 今回の取り組みは、多くの企業さんが参考にされるのではないかと思います。ところで、昨年のアワードでは店舗を持たないオリックス銀行様がWebでの手続きを紙でわかりやすく伝えるということを実現しました。これは新しい印刷物の役割を示していると感じました。スマホやネットで手続きしようとするとき、紙がそばにあって手順がわかりやすく示されていると安心できますよね。

髙橋:そうですね。色々なデバイスを使って操作するのに、操作しながらそのデバイスは見られませんよね。そういう意味では紙の役割って大きいのかなと思います。

― 大きいですね。昨年のアワードを通じて、私もそのことを改めて感じました。

髙橋:弊社の社員は個人携帯と会社が提供したスマホを持っているのですが、個人で何か申し込むときは個人の携帯を使いますよね。そのとき、私のような世代はもう1台で使い方を見ながら操作している。デジタルを補完するのが紙の役割なのでしょうね。

― 一覧性があるので、指で追いかけたり何度も見返して確認をすることができますね。これからは、色々なデバイスを使い、お客様と企業のコミュニケーションをサポートするような立ち位置がすごく重要になってくると思います。今、次のアワードの企画をしていますが、様々なデバイスを用いた複合的なコミュニケーションが中心になると考えています。

印刷物・デジタルそれぞれの特性を生かしていくことが重要だ

― 貴社の今後の取り組みについてお聞かせください。

髙橋:印刷物、デジタルツールそれぞれの特性を生かして、より一層のわかりやすさ、使いやすさを実現していかなければと思っています。それから、モノからコトへというシフトチェンジです。我々が提供するソリューションの機能だけでなく、ソリューションのサービスを体験していただくことにこだわっていきたい。いずれにしても、コロナ禍という厳しい環境の中では、時代の変化にしたがって、企業の存在意義を常に再定義することをくり返していく必要があります。ただ、冒頭申し上げた製造業としての原点に立ち返るという部分は忘れずにいたいなと思っています。

UCDの認知度が上がるよう我々も努力したい

― 最後に、UCDAに期待すること、苦言でも結構ですのでお願いします。

髙橋:お客様にUCDについて説明するとき、UCDAで検索してみてくださいと申し上げています。より認知度が上がるよう、我々も取り組んでいますが、ぜひさらに認知度を上げていただきたい。それから、持っている知見をぜひ色々な形で教えいただけるとありがたいです。

― 色々な方からUCDAに有名になってほしいと言われます。そうすれば、自分たちが取り組んでいることも一緒に社会に広く認知されるとお考えです。小さな所帯ですが貴社や色々な企業さんと一緒に活動して有名になっていきたいと思っています。頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

髙橋:こちらこそよろしくお願いします。