UCDAフォント「みんなの文字」を採用

株式会社東急百貨店

営業政策室 店舗運営部
マネージャー 渡辺浩也 氏

—渋谷駅と直結している東急百貨店東横店の全ての案内サインに「みんなの文字」が使われています。どのような経緯でお使いになられたのですか。

マネージャー 渡辺浩也

マネージャー 渡辺浩也

渡辺 当社では、企業理念に掲げるビジョン実現させるためにサービスファスト活動というものを行っています。お店の環境づくりを担当する店舗運営部の、2012年度のテーマは「伝わるサインをつくること」でした。サインといっても、書体や大きさ、色のバランス、まわりの環境等、考慮しなければならない点がいろいろあります。今回東横店をリニューアルするに伴い、ユニバーサルデザインという視点をとりいれました。調べてみると、誰でも読みやすい書体(UDフォント)があるということがわかり、候補にあがったのが見やすいといわれている代表的な3種類の書体でした。サインを変えるにも相当費用がかかるので、リニューアルのタイミングに合わせ、店内全ての案内サインを変えることにしました。

—文字を選ぶ過程で、どのようなことに苦労されましたか。

渡辺 私たちもどの書体が見やすいのか判断がつかなかったので、候補3種類の書体で同じ言葉を使い、比較してみました。級数や明度を変えたり、特徴的な文字を打ってみたり、原寸大のものを作ってみたり、いろいろな方法で比較してみました。社内では、どれでも同じかなという意見が多かったのです。弊社では、障害者の方々への配慮を学ぶため、自ら体験して改善に役立てるハートフル研修というものを定期的に行っています。そこでお世話になっている先生に協力いただいて、三つの書体で作ったサンプルを徹底的に比べていただきました。そこで出た結論は、「みんなの文字」がいちばん見やすいということでした。

—検証を重ねた結果ですね。文字だけではなくサイン全体に関して、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れたということですが。

渡辺 今回、案内サインの考え方をまとめたマニュアルを作りました。手作りのものですが、私たちの基準として活用していくためのものです。読みやすさやわかりやすさだけではなく、人間の行動パターンも考えながら、どの位置や高さにサインがあるべきかも検証して定義付けました。お客さまを案内、誘導するサインは、百貨店にとってとても大事なものです。今回案内サインに使用したピクトは、世界標準ではなくJISの規格を取り入れました。お客さまの中に高齢者の方も多いので、見慣れたサインの方がわかりやすい。例えばインフォメーションのサインは、世界標準では「i」ですがJISでは「?」です。この方が馴染み深く高齢者の方にはわかりやすいですね。このように、いろいろな方々にアドバイスをいただきながら、たくさんの資料から学んで、独自のマニュアルを作りました。

 

—お客さまや従業員の方の反応はいかがですか。

渡辺 お客さまと従業員に対してアンケートを実施しました。お客さまにはサインだけではなくサービス全般についてのアンケートだったのですが、従業員には改装前の案内サインをよく見ておいてもらって、改装前と改装後ではどのように違いが出たか検証しました。従業員からの評価は非常に高く、行き先についてお客さまからの質問も少なくなったとのことでした。今回東横店は建物があれだけ大きく変わったので、当初はお客さまが戸惑うこともあったと思います。そんな中で、サインが少しでもお客さまの行動を助けるお役に立てたらいいですね。

—東横店の表示物の他にも「みんなの文字」をお使いになる予定はありますか。

渡辺 実は、東急百貨店たまプラーザ店のサインも「みんなの文字」に変更している最中です。これからの案内サインについては、このマニュアルが基準になっていきます。全ての方がサインだけで行きたいところへ行ける訳ではありません。お客さまに訪ねられたら、同行案内することがサービスの基本です。その手助けになるのがサインですね。私たちの「伝わるサイン」という考え方とUCDAの「見やすく、わかりやすく、伝わりやすく」という考え方は重なる部分が多いと思います。今後、書体だけではなくもっと大きな視点で、アドバイスいただければと思います。

—本日はどうもありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。